日本の マンドリン・ギター界の草分けの一人である
武井守成 (1890-1949) の 1943 (
昭和18) 年の作品で、彼の同じ秋を題材とした 「
落葉の精」 とは かなり趣を異にした、独特の雰囲気をもった曲です。
ホ短調、
アダージョ で 4分の4拍子と 4分の3拍子が入り混じり、上昇し下降する音型と アクセントのある平坦な音型の繰り返しになっています。 そして マンドリン 1,2、マンドラ、マンドチェロ、ギターの 5重奏の他に マンドローネ、ギターローネ (いずれも マンドリン属や ギター属における ベースのような低音楽器) が入った 7重奏で、分厚く重い印象のものになっていて、それがこの曲を特徴づけています。 それから、中間あたりで低音の
マンドラ が高音の弱音で歌っている場面もあり、短いながら色々暗示に富む曲だと思います。
「落葉の精」 と同様に日本の "侘び寂び" あるいは "もののあわれ" を現わしているように思いますが、近距離の事象を表現した 「落葉の精」 に対して、日本の田園地帯あるいは 山間部の遠距離の秋景色の 重厚感を表現しているように思われます。
武井守成の作品としては、上記の 「
落葉の精」 の他に 「
微風」 や ギター曲 「
大利根」 も Upしてありますので、それらもお聴きください。