"世の中にこの曲さえあければ、他はいらない" と思えるくらい、この曲は凄い曲だと思います。 それは ヴァイオリン一丁で奏くという技術的な面や、変奏のさせ方などの作曲技法などもさることながら、人の情感、感覚のすべてがこの曲の中に織り込められ、それらが一つの宇宙を構成していると言ってよい、圧倒される凄さがあるのではないでしょうか。
この曲は 無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番 の 第5曲で、ニ短調、4分の3拍子。 "シャコンヌ" は短く繰り返される主題の各音の上に変奏を築いていくものですが、この曲はその壮大さ深遠さは抜群のものです。 冒頭 8小節の主題はその後変奏の土台として 30回も繰り返され、最後にまたそっくり原型で再現されます。 全体の構成としては、第15変奏までの ニ短調の 第1部分
(この演奏で 6'30" まで)、そして第24変奏までの ニ長調の 第2部分
(〜 10'35")、そして終わりまでの ニ短調の 第3部分と、調性的に "短・長・短" の 3部形式となっています。
余談ですが、私はこの曲は今までに
グリュミオー の演奏などを中心に、また ギターなどによる演奏、そして今鳴っている MIDI作成などを含め数百回は聴いてきました。 思い返せば、最初の 10回位は全くうるさいだけで面白くもなんともなく、しかし
マルビ の身でありながら大枚をはたいて買った レコードゆえ、聴くともなく "ながら族" を決め込んで音を鳴らしていましたが、十何回目あたりからは次第に引き込まれ、その後は全くの虜になりました。...もし無人島へ流され 1曲だけ音源か楽譜を持って行くことが許されるなどということがあったとしたら、迷わずこの曲を持っていくでしょう。
この曲は単独で演奏されることも多く、ギターでも何人かが録音もしており、当サイトではこの曲の
ギターの演奏 も Upしてあります。 そしてやはり 無伴奏ヴァイオリン・パルティータ から 第3番 第3曲 の 「
ガヴォット」 も Upしてありますので、それらもお聴きください。