序 曲 二 短 調 (ファルボ作曲)
Overture in D min (Falbo)
(マンドリン・アンサンブル、8'10"、MP3 : 7.5MB)
(写真は ギリシャ : サントリーニ島の日没)
サルヴァトーレ・ファルボ (1872-1927) によるこの曲は マンドリン・オリジナル曲の中でも 1・2を争う屈指の名曲と言って良いのではないでしょうか。暗い導入に続く 地を這うような暗雲の 第1主題と 高く澄んだ光明の 第2主題 (この部分実質 イ長調) との対比、あるいは渦巻くような濁流の 第1主題と鏡のように透き通る水面の 第2主題との対比、といった関係が、葛藤と平穏とを見事に表わしていると思いますし、半音単位での動きの多い和音が この曲を忘れ難いものにしていると思います。ソナタ形式。 序奏に始まって、この演奏で 1分20秒から 第1主題、2'17" から 第2主題の提示部、3'39" から展開部、4'22" から再現部で、その再現は 第2主題に始まって、5'59"からは序奏の、そして 6'31" からは 第1主題の再現と続き、そして終結部は 7'19" から、となっていますが、展開部が短く、しかも再現が 第2主題が先となっているため、印象としては緩徐部分が長い 3部形式のような印象も受けます。この曲が作られたのは日本では丁度 明治から大正に代る 1912年。 機械文明が本格化し、第1次世界大戦 (1914 -1918) も予見される頃の作品で、"国破れて"、いや "国乱れて山河あり" とでもいった印象の、そして現代にも通じるそうした不安あるいは ストレスと癒しが顕されている音楽という気がします。 またこうした点、同じ ニ短調である フランク (1822-1890) 作曲で 1889年初演の 「交響曲 ニ短調」( サンプル演奏)に通じるものがあると思います。なおこの曲の演奏は YouTube にもいくつかの演奏が Upされていますが、ほとんどのものは第2主題で テンポを落としていません。 楽譜の第1主題の始まりの所に "アレグロ" の指定があって、第2主題の所には何も記載がないためですが、当サイトでは私の上記の "両主題の対比" の解釈から テンポを落としています (実は私が学生時代に居た当時の マンドリン・クラブの演奏でも テンポを落していました)。